流れに沿ってノロノロと進むタクシーの揺れが、疲れた体に眠気を誘う。
修二の瞼が再び落ちかけた時、キュッとタクシーは停車した。
はっとして目をあけると交差点の信号は赤になっていた。
目の前の横断歩道を人の群れが一斉に渡りだす。
修二は欠伸をしながらぼんやりとそれを見ていた。

人の群れの中に一瞬金髪の髪が揺れたように見えた。反射的に身を乗り出した。「お客さん?どうかしました?」
運転手が驚いて声をあげる。だが、修二にはその声など聞こえていなかった。
「つー君……!?」
無意識に小さく呟く。
目の前を横断する流れの中に確かにつー君を捉えていた。
隣にいる連れらしき女に話しかけた時顔がハッキリと見えて確信した。
「すいませんっ、ここで降ります!」
修二はかたわらの荷物を掴んだ。横の浅井がその大声で目を覚ます。
「宮本?!」
運転手が修二の剣幕に慌ててドアを開けると、修二は勢いよく降りる。
状況をまったく把握できずにいる浅井に
「訳は後で説明しますから、先に戻っててください!すいませんっ!」
修二は頭を下げると浅井の反応も待たずに走りだした。
人の波をかきわけるように走って角を曲がったところでつー君の後ろ姿を見つけた。
「…つー君っ!!」
叫んだ瞬間、つー君が振り返った。
「修二……。」
つー君が驚きを隠せない表情で立ち止まった。
隣にいるみしらぬ女が不思議そうに二人を交互に見ていた。