顔を見て話してないのに、顔を見て話している気分になる。
それで私の愚痴を面倒臭そうに、でもしっかりと聞いてくれるそんな人。
少し焦げ茶の髪に、背が高くて、一重のスッとした目。それにピシッとスーツを着こなした大人の男の人。
私の頭の中では、彼はそんなイメージ。
「これはどう思う?小動物のペットから女を意識してもらえたりとかは、……ある?」
「俺の経験からして、……無い!」
「無いのっ!」
「無いな」
思い切り断言してきたし。
恋愛経験が豊富らしい彼の経験からは、そんな逆転は起きないらしい。
「そ、……そんなぁ」
そんな言葉と共に、あからさまにガクッと肩を落とす私。
後ろから聞こえてくるのはフッという鼻で笑われた音。
可能性あるかもよ!と言われたら頑張ってたかもしれない。
っていうか、馬鹿な私は間違いなく頑張ってた。
そんでもって、また失恋。
その私の道筋が、彼にも分かったのかもしれない。
彼はきっと大人で、……私なんかよりも嫌と言うほど現実を知っているんだろう。
だから適当な事を言えなかったのかも。
私はまだまだ子供だ。



