耳に直接響く少年の声に、ぶわっと鳥肌が立つ。
この少年の声が好みな自分に腹が立つ。
「名前?」
平静を装ってそう聞き返す私は、目の前の少年よりやっぱり大人なんだと思う。
「そっ、名前」
名前、……ね。
ん?
「ああぁぁぁぁあ!!」
「何だよ!?」
「私、君の名前知らない」
次に会ったら聞こうって思ってたの、スッカリ忘れてた。
どうせ会わないだろうって、高を括ってたのもあるけど。
少年も私に言って無かった事に今気づいたらしく、あー、そういえば。なんて漏らしている。
私が名前を言っていたから、自分も言ったつもりになっていたのだろう。
結構よくあるパターンだ。
「俺の名前、高橋佑真(タカハシ ユウマ)つーの」
「高橋佑真君ね。オッケー、オッケー!じゃあ、佑真君ね!」
「おう」
佑真君。と覚える為に何回か小さな声で復唱していると、
「ほら、貸せよ」
そう言って佑真君が手を差し出してきた。



