そして、スッと両手で少年にそのノートを差し出した。
「……何?」
怪訝そうな表情で首を傾げる少年に、ガバッと頭を下げる。
「サイン下さい!」
「はっ!?」
少年の反応の悪さに顔を上げると、眉間に皺を寄せて危ない人を見る目で私を見ている少年。
いや、うん。
いきなりサイン下さい!なんて言う奴は変な人に分類されるとは思うよ。
思うけど、……将来有名になるかもしれない天才少年が目の前にいて、話をしてるなんて状況なんてそうそうあるもんじゃない。
ここでサイン貰っといたら、将来彼が有名になった時に自慢出来るじゃないか!
なんて魂胆だったりするのだが。
「将来、俺が有名になった時に見せびらかしたいとか思ってる?」
「なっ、何故それを!」
「葉月、馬鹿だからそんな所かなって思っただけだけど、図星かよ。……ほんと、…哀れな馬鹿だな」
小学生に、哀れな馬鹿って言われましたがっ!
「う、ううううるさいわっ!」
私の怒りの叫びに、へらへら笑っているこの少年が本当に心底ムカつく。



