「葉月には言わねぇ」
またもや呼び捨て!
……だけど、今はその事は置いといて。
「何でよ?もしかして、お母さんの手作り御守りがあるから。とかだから恥ずかしいの?」
なんだかんだいっても小学生。
だから、そういう御守りを大切にするものだ。
少年の弱みを知れるとニヤニヤしながら聞いたのだが、少年は私の想像の更に上をいく。
「葉月は鞄に手作り御守り付いてるけどな。それ、手作りだろ?」
スッと指差されたのは、私の鞄にぶら下がっているくまのぬいぐるみ。そのくまの手には御守りの様な物が握られている。
そして、何を隠そうこのくまのぬいぐるみは、私が高校受験の時に母が作ってくれた御守りだ。
「えっ!……そ、そうだけども……」
もしかして、……私が母の手作りの御守りを大切にしているのに気付かれた!?
いやいやいや、流石にそれは……
無い。と思った瞬間、聞こえてきた少年の声。
「恥ずかしかったの?」
フッと鼻で笑う少年は、最早少年なんかじゃなくて、私の弱味を握った嫌な大人だ。



