そして、今日はランドセルは持っていないらしく、おもむろに手に持っていた黒の手提げ鞄から紙を取り出した。
その紙に書かれている文字に目を奪われる。
『私立中学校入試対策』
というその文に。
「塾、行ってるから」
「……お受験ですか?」
「お受験ですね」
私は高校受験しかしてないから、中学受験がどういうものか分からない。
けど、受験っていうのがどれだけ大変かっていうのは分かる。
「た、大変だね」
「だね」
淡々とした口調で話すこの少年は、受験なんて気にしていないみたいな雰囲気を醸し出している。
もしかしてこの少年、……大物!?
「受験、不安になったりしないの?」
「しない」
まさかの即答!
「何で!?」
思わずブランコから降りて、グイッと少年に顔を近付ける。
と、プイッと顔を逸らされた。



