「あんた、名前は?」



後ろを振り返ると少年と目が合う。


そして悪戯にニヤッと笑う少年。



ば、馬鹿にされてる……。



「お姉さんは、近藤葉月っていうの!今度からはちゃんと葉月お姉さんと呼びなさい!」


「ふーん。お姉さんねぇ……」


「何か文句あるの!」



キッと少年を睨むけれど、少年は全く気にしてないのか平然としたまま。


そして、


「別に。じゃあ、気を付けて帰れよ。葉月」


爆弾投下。



『葉月』って呼び捨てかいっ!



「葉月お姉さんじゃっ!!」



私の怒りの叫びに、両手で耳を押さえながら「あー、うっせぇ」と言うと、そのまま丁度やって来たエレベーターに乗り込んでいった少年。


その姿を見届けると、ふんっと鼻息を荒くさせて再びマンションに背を向けた。


そして、自分の家に向かって歩き出す。


風でふわっと肩までの黒髪が靡く。



歩き出してからも、頭の中を占めるのはさっきのムカつく少年の事ばかり。



あー、何かめちゃくちゃムカつく少年だった。