小学生に剥きになって言い返してる私もどうかと思うけど、この少年は年上への対応が酷い。


少年の態度に思わずぷうっと頬を膨らませる。


と、クスクス笑いながら、


「あんた、子供」


なんて言葉が聞こえてくる。



子供は君だっ!



そう言ってやろうとして足を止めたが、その場所は既に少年の住んでいるマンションの前だった。


目的地に着いてしまったせいで言いたかった事も言えず、ぽかんと口を開けたままマンションを見ていると、スッと少年の手が私の手から抜け出ていく。


ふわっと少しだけ生温い風が手に当たる。


何だか一気に寂しくなった掌。


そんな私を他所に、少年はスタスタとマンションのエントランスの中へと進んでいく。


エントランスにある時計に目を向ければ、夜の10時を差していて。


多分、私のお母さんも心配しだす時間だ。


少年がエレベーターに乗ろうとボタンを押すのを見届けた所で、クルッとマンションに背を向ける。



私の役目はここで終わり。


私も、そろそろ家に帰らないと。



そう思って一歩前へと踏み出した瞬間、後ろからの大きな声が響いた。