少年の指の先にあるのは、この公園に面している8階建ての大きなマンション。
寧ろこの公園は、あのマンションの人が使う為に造られたのかなと思う程の近さ。
多分、この少年はちょっと家の外に出ただけ……なんだろう。
「あっ、……家近いんだね」
苦笑いを漏らしてそう言えば、明らかに馬鹿にした顔をしてフッと鼻で笑ってから「だね」と言われる。
なんか、……めちゃくちゃムカつくな、この少年。
相手が大人だと思っていたら、こんなに気にならなかったのに。
子供だと分かった途端、腹が立つ。
それでも少年より年上の私が大人にならなければ!と思うと精一杯の笑顔を作った。
「まあ、でも、早く帰らないとお母さん心配するよ」
「それはあんたもだろうが」
にっこりと笑っている筈の口角がひきつる。
少年の返しも間違ってはいない。だからこそ余計にムカつくのだ。
「そ…だけども……。でもでもお姉さんは高校生だから!」
そうだ!何を怯む事があるんだ!
私は高校2年生。
目の前の少年は身長からして小学五年生か、六年生だ。
この差は大きい。
今更だけど高校生の大人っぷりを見せつけてやる!



