彼女と初めて出会ったのも、こんな寒い夜だった。

当時、僕は人生に目的もなく、ただなんとなく生きていた。
27歳、独身。交際している女性はいない。
仕事は平凡なサラリーマンながら、それなりに稼ぎはあるし、容姿も特別悪い訳ではないので、けしてモテないわけではない。
実際、多くはないが、女性と交際したこともある。だが、続かない。
そうこうしているうちに、いつしか交際することが億劫になり、もう何年も独りだ。
そして、今では独りが楽になってしまい、女性を食事に誘うこともなくなった。

だが、それでも健康な27歳の男だ。
性欲はある。
そんな時に利用するのがこれだ。

『姫。18歳♪フリーター☆
色白で細身("⌒∇⌒")
顔も可愛いとか綺麗ってよく言われるよ( ̄∇ ̄*)ゞ
今、ちょっと困ってるんで、助けてほしいな(>_<)
優しいお兄さんとかおじさま、興味あったらメールちょうだいね(#^.^#)』

そう、出会い系サイトでの援助交際だ。
恋愛と違い、駆け引きや気遣いなど不要だし、一緒に食事や遊びに行ったり、プレゼント代などを考えると、援助代のほうが安い。

というわけで、その夜、この18歳のフリーターと会う約束をして、待ち合わせ場所のカフェでコーヒーを飲んでいると、約束の時間の10分くらい前にメールがきた。
『着いたよ♪どんなカッコしてる?
あたしは黒のコートで、赤いバッグ持ってる(*´∇`*)』
僕は返信する。
『僕は青いセーターで、店に入って左から2番目のテーブル席でコーヒー飲んでるよ』
すると、店の自動ドアが開き、メールの通りの服装の少女が入ってきた。
その少女を見て、僕は衝撃を受けた。
肩まで伸びた艶やかな黒髪、透き通るような白い肌、大きな黒い瞳、整った鼻筋、白い肌に映える赤い唇、全てがこの世のものとは思えないほどの美しさだ。
「どうしたの?お兄さん。
ぼーっとして。」
少女に言われ我に返った。
「ああ、ゴメン、ゴメン。
君も何か飲む?」
すると少女は、
「ううん、それより早く行こうよ」
と僕の手を取り、立ち上がるよう促した。
「ああ、分かったよ。じゃあ、行こうか」
僕がレジで会計を済ませると、少女は腕を組んできて、
「さ、行きましょ。あたしもう喉カラカラ」
妙なことを言う。
じゃあ、さっき何故断ったのだろう。