あの恐ろしい姉の形相を思い出すと
夏だというのに身震いした。




(今日は帰らない方がいいな)




心中で強く決意を固めると
しわくちゃになったテストを鞄につっこむ。


不意にその時、指先がかすかに
振動をとらえた。


振動源を手探りで探す。


鈍い電子音を響かせながら震えていたのは
ケータイだった。


画面には『湯本』と表示してある。




「湯本のやつ、授業中にメールかよ」




周囲にバレていないのを確認してから
静かにケータイを開く。


俺のケータイはスライド式ので、
随分と前から使っていた年代物だ。


俺のこのケータイの機種は、今では名前を変え
白い犬のキャラクターで人気を博していた。


それを開き、メニュー画面から受信箱を開く。