僕の小学校は普通の小学校と違い、全校生徒の数が少ないんです。
なので僕たち6年生のクラスも1つしかありません。
一年生からずっと一緒のクラス、クラスメートなので今じゃ家族と同じくらいみんな仲がいいんです。
だから、クラスに知らない友達は絶対にいないはずなんです。
でも、僕たちの教室には誰も知らない名前の机がいつも置いてあるのです。
キーンコーンカーンコーン
古めかしい感じのチャイムと共に先生の出席確認がはじまる。
がやがや
教室はいつものようににぎやかだ。
先生はそんなことを気にせずに大きめの声で点呼していた。
すると、
「山裾~」
先生がその名前を呼ぶとあたりがシーンとなる。
これもいつものことだ。
出席確認が終わってしばしの休み時間。
「ねぇねぇ、山裾くんてさー…いつ来るんかね?」
クラスの女子が言い出した。
「もう来ねんじゃねーの?だってもう俺たち6年だぞ?ここまで来ねんじゃ卒業まで来ねんじゃね?」
「てか学校一回も来ないで卒業できんかよ。」
「それもそーだな。ふははっ」
わははははは!ざまーねーな山裾~
かつて、一週間に一回くらいこの教室ではそんな会話が繰り広げられていたが、今になっては1ヵ月に一回程度となった。
1年生のときからある空席の机。
その机にはいつだって「山裾」という名札シールが貼ってあった。
一年生のときのものをそのまま使い回されているとは思えないほどキズ1つないキレイな机。
強いて言うなら黄ばんだ名札シールだけが月日を感じさせる。
今の今まで学校に来たことのない山裾くんには様々な噂が作られた。
ヤンキー説
引きこもり説
死んでる説
透明人間説
幽霊説
なかには極度の恥ずかしがりや説なんかもあった。
小学校4年生の頃。
クラスの男子が思いきって先生に聞いてみた。
「先生、山裾くんはなんでずっとお休みなんですか?」
すると先生は少し上の方に目をやり、
「ん~、実は先生もよくわからないんだ。ま、あんまし気にすんな。色々事情みたいなのがあるんだろ。」
素っ気ない先生の答のない返答。
僕たちはがっかりした。
しかし、好奇心はわくものだ。
小学校5年生の夏休み。
僕たちは学校近くの公園に集まって、自由研究と称し、山裾くんを探す作戦会議をした。
「このあたりの家の表札片っ端から見て、山裾くんを探そうぜ!」
おおー!!
そして僕たちは決められた区間をグループに分かれて探した。
結局、日が暮れるまで探したが、「山裾」という表札は見つからなかった。
「くそ…」
自由研究は失敗に終わった。
この日からみんなはあまり山裾くんに感心を持たなくなった。
いや、「諦めた」と言うべきか。
キーンコーンカーンコーン
下校のチャイムが鳴った。
今日もいつもと同じ、「当たり前の学校」が終わった。
「当たり前」。
そんな日常はある日突然崩される。
次の日
僕は、珍しく早く学校に着いたので、どうせなら教室に一番乗りしてやろうと教室まで走ってかけた。
(教室まであとちょっと…)
この位置から見る限りドアは閉まっている。
(よっしゃ!一番乗り!)
ガラガラー
そう思いながら勢いよくドアを開けた。
(えっ!?)
一人、椅子に座っていた。残念ながら僕は二番手だったみたいだ。
(なんだよ~、先来てた人いんのかよ~)
僕は少しがっかりして自分の席に座った。
しかし、教室に入ったときから僕の心には引っ掛かるものがあった。
いつも見ている風景。
そんな風景にいつもあるはずのないものがあったら、それは異変というのだろう。
僕の異変は、教室をあけたときに見るいつもの風景のなかにいつもと違う邪魔するものがあった。
それは一番後ろの窓側の席。
そこにはいつも誰も座っていない席があった。
僕たちはそれが「当たり前」だった。
今日、その日常は崩される。
・・
その席には「山裾さん」が座っていた。
なので僕たち6年生のクラスも1つしかありません。
一年生からずっと一緒のクラス、クラスメートなので今じゃ家族と同じくらいみんな仲がいいんです。
だから、クラスに知らない友達は絶対にいないはずなんです。
でも、僕たちの教室には誰も知らない名前の机がいつも置いてあるのです。
キーンコーンカーンコーン
古めかしい感じのチャイムと共に先生の出席確認がはじまる。
がやがや
教室はいつものようににぎやかだ。
先生はそんなことを気にせずに大きめの声で点呼していた。
すると、
「山裾~」
先生がその名前を呼ぶとあたりがシーンとなる。
これもいつものことだ。
出席確認が終わってしばしの休み時間。
「ねぇねぇ、山裾くんてさー…いつ来るんかね?」
クラスの女子が言い出した。
「もう来ねんじゃねーの?だってもう俺たち6年だぞ?ここまで来ねんじゃ卒業まで来ねんじゃね?」
「てか学校一回も来ないで卒業できんかよ。」
「それもそーだな。ふははっ」
わははははは!ざまーねーな山裾~
かつて、一週間に一回くらいこの教室ではそんな会話が繰り広げられていたが、今になっては1ヵ月に一回程度となった。
1年生のときからある空席の机。
その机にはいつだって「山裾」という名札シールが貼ってあった。
一年生のときのものをそのまま使い回されているとは思えないほどキズ1つないキレイな机。
強いて言うなら黄ばんだ名札シールだけが月日を感じさせる。
今の今まで学校に来たことのない山裾くんには様々な噂が作られた。
ヤンキー説
引きこもり説
死んでる説
透明人間説
幽霊説
なかには極度の恥ずかしがりや説なんかもあった。
小学校4年生の頃。
クラスの男子が思いきって先生に聞いてみた。
「先生、山裾くんはなんでずっとお休みなんですか?」
すると先生は少し上の方に目をやり、
「ん~、実は先生もよくわからないんだ。ま、あんまし気にすんな。色々事情みたいなのがあるんだろ。」
素っ気ない先生の答のない返答。
僕たちはがっかりした。
しかし、好奇心はわくものだ。
小学校5年生の夏休み。
僕たちは学校近くの公園に集まって、自由研究と称し、山裾くんを探す作戦会議をした。
「このあたりの家の表札片っ端から見て、山裾くんを探そうぜ!」
おおー!!
そして僕たちは決められた区間をグループに分かれて探した。
結局、日が暮れるまで探したが、「山裾」という表札は見つからなかった。
「くそ…」
自由研究は失敗に終わった。
この日からみんなはあまり山裾くんに感心を持たなくなった。
いや、「諦めた」と言うべきか。
キーンコーンカーンコーン
下校のチャイムが鳴った。
今日もいつもと同じ、「当たり前の学校」が終わった。
「当たり前」。
そんな日常はある日突然崩される。
次の日
僕は、珍しく早く学校に着いたので、どうせなら教室に一番乗りしてやろうと教室まで走ってかけた。
(教室まであとちょっと…)
この位置から見る限りドアは閉まっている。
(よっしゃ!一番乗り!)
ガラガラー
そう思いながら勢いよくドアを開けた。
(えっ!?)
一人、椅子に座っていた。残念ながら僕は二番手だったみたいだ。
(なんだよ~、先来てた人いんのかよ~)
僕は少しがっかりして自分の席に座った。
しかし、教室に入ったときから僕の心には引っ掛かるものがあった。
いつも見ている風景。
そんな風景にいつもあるはずのないものがあったら、それは異変というのだろう。
僕の異変は、教室をあけたときに見るいつもの風景のなかにいつもと違う邪魔するものがあった。
それは一番後ろの窓側の席。
そこにはいつも誰も座っていない席があった。
僕たちはそれが「当たり前」だった。
今日、その日常は崩される。
・・
その席には「山裾さん」が座っていた。