珍しく俊から電話が着たのは、病院から帰宅し、冷蔵庫から出した缶ビールのプルタブに手を掛けたタイミングだった。

見張られているんだろうかも思える程のタイミング。

「どうした?」
『今からちょっと来てほしいんだ』
「え?今?」
『あぁ、すぐに』

初めて聞く位慌てめいたその言葉に、すぐに彼女の事かと察する。

「どうした?」
『梢、熱だしたんだ』
「熱?」
『話はあと。来れるか?』

電話をしながら出したばかりのビールを冷蔵庫に戻す。

「すぐ行く。住所メールして」

だいたい行くのは梓の家で、俊の部屋へは行った事がない。
それは多分彼女が入り浸りで、鉢合わせが無いようにだろうと察しはつく。

けどそれを気にしたことはない。