少年はマナブと言った。
少女が自分に名前がないのだと言うと
「考えてあげる」
と言った。

少女はその言葉を理解すると胸の中が温かくなっていく、嬉しいという感覚に慣れていない少女はどうしていいか分からずに俯いた。

「そうだ! ルナは?!」

マナブの声に顔を上げると
マナブは凄くいい名前を見つけたとばかりに少女の方を見ていた。

「ルナ?」
「うん、お母さんが言ってたんだ! ルナって言うのは月の神様の名前なんだって!」
「神様?」
「うん、凄くきれいな天女様なんだって!」

マナブは目を輝かせてそう言った。
「綺麗か……私には勿体ない名前だな。」
マナブはそれを聞くと首が飛んでいくんじゃないかと思うほど何度も横に振った。
「そんなことない! ルナは綺麗だよ!」

マナブの中では少女は既にルナに決まっているようで淀む事なくその名を口にする。

少女の顔に微か笑みが浮かぶ。

―― ルナ……か…… 。

「ルナ!」
名付けて貰ったばかりの名前を、名付け親でもあるマナブが嬉しそうに呼ぶ。

ルナはくすぐったい思いをしながらも悪い気はしなかった。