ある場所、というのは私の思い出の場所。


そこにはどこからか流れてきた大きな丸太がある。


いつもだったらここに座って、外を眺めているんだけど...


ピタッと足をとめて先客がいることに気づく。


───今日はやめておこう。


そう決めて足を、きた道へくるりと変えると。



「.....おい」



え?私?



「...お前だよ」



「なんで...しょうか?」



「俺もう帰るからここ座っていいぞ」



「え、いや...」



なんで座ることを知ってるんだろう。


でもまぁ。



「私ももう帰るのでゆっくりしてたらどうですか?」



一応断っておこう。


帰る場所なんて、ないけど。



「いいから。じゃあな」



スタスタと歩き始めてしまった彼は


とても大きな背中をしていて。


色々なものを背負っている、気がした。