「香奈も貰ったんでしょ、チョコ」
「愛華ほどじゃないけどね」
でも、貰ったんでしょ。
まぁ、香奈もモテるしね。
「松浦君からは?」
「…貰ったよ」
あーあ、ほんのり顔赤くしちゃってさ。
恋する乙女の見本みたい。
松浦君とは、香奈の好きな人。
同じクラス、香奈の前の席。
サッカー部、期待の星。
顔も、勉強もまあまあ。
いつも男子と馬鹿してるけど、女子には優しい。
「さっき貰ったんだ。昼休み始まってすぐ」
香奈は聞いてもいないのに、話し出した。
言葉のひとつひとつを、「嬉しい」って感情が色どっている。
「買ったやつでごめんな、って言ったんだよね」
香奈はいつもクールなのに、松浦君の話になると全然クールじゃない。
きっと、松浦君の前でもこうなんだろうな。
大人びた雰囲気も全部、等身大の女の子になる。
それは、あたしの知ってる香奈じゃなくて、松浦君が知ってる香奈ってことで。


