「何考えてるの?」
突然、鈴の音のような声がした。
あたしを覗き込むようにした、香奈の顔が見えた。
「別に~」
「嘘。なんか悲しそうな顔してたよ」
「え~?」
「はぐらかすの、下手だね」
香奈は、優しく笑った。
香奈は可愛いっていうか、綺麗な顔をしている。
午後のやわらかな日差しが、白い肌を照らす。
赤い形のいい唇は、少し口角が上がっていて、微笑んでいる。
うん、綺麗な顔だ。
確か、そこそこ良い家の一人娘。
愛情いっぱいに育てられた、お嬢様。
自慢の娘なんだろううな。
あたしは、そんな事を考えながら香奈をみていた。


