そんなチョコでもお返しを貰えるのは、夏実も可愛いから。
もちろん、単純にお返しとして渡す男子もいるだろう。
けど、そんなのは少数で、大抵の男子は好意を持ったお返しだ。
夏実は、あたし程じゃないけど普通に可愛い。
性格だって、お子様だけど悪くはない。
明るくて、男子も絡みやすいのだろう。
そうして、夏実と仲良くなった男子は、バレンタインに夏実にお返し目当てのチョコを貰って、勘違いしてしまう。
そして、決戦のホワイトデー。
夏実に下心をもった男子は、次々に玉砕していく。
あたしに言わしてみれば、一口チョコで期待してしまう男子の方がおかしい。
一口チョコを本命の男子に渡す女子が、どこにいるのだろう。
ついでに、夏実は初恋もまだの超純情少女だし。
…そういえば、あたしもここ数年恋をしていない。
あの心地いい胸のときめきも、体が浮くようなふわふわした感じも、何もない。
さっきの男子は、あたしを見るたびにあんな感覚に襲われたのだろうか。
いいな、羨ましいな。
あたしは、もしかしたらもう二度とあの感覚にはならないのかも。
あたしの心は、多分枯れているだろうから。
ふとみると、芝生の上に座った夏実が、美味しそうにチョコを食べていた。
夏実は、これからいっぱい恋をするのかな。
いいな、羨ましいな。
なんてね。


