「愛華ー」
「ん」
2時間目の授業中。
前の席から手が伸びてくる。
あたしは、ポンとその手に消しゴムをのせる。
少しすると、
「サンキュ」
と言いながら、祐がこっちを向く。
「んー、どういたしまして」
あたしは、にっこり笑顔を向ける。
「消しゴム忘れて来るとか、祐もおっちょこちょいだねー」
祐が転校してきて5日目。
あたしは順調に祐と仲良くなっていった。
おかげさまで、毎日ドキドキさせられっぱなしだ。
祐は優しいし、頼りがいあるし、かっこいい。
正直、完璧。
このままいけば、もしかしたら付き合えるかもしれない。
ただ1つ、この恋に問題があるとすれば、それは夏実だ。
あたしが祐と仲良くなるのに比例して、香奈や夏実も祐と仲良くなっていった。
それは別にいいんだけど。
ほんとはちょっと嫌だけど。
まだはっきりと言われたわけじゃないけど、夏実は祐が好きだと思う。