「それでは、音楽を流します」
放送部員の声のあと、今流行りのラブソングが流れ始めた。
暖かい春間近の日差しが降り注ぐ、窓側の席。
午前の授業が全部終わって、待ちに待ったお昼の時間。
席移動自由なせいで、皆はグループごとに集まって、おしゃべりを楽しんでいる。
あたしの席の近くの椅子に座っている、香奈と夏実。
あたしの机の上に、いつものようにお弁当を広げる。
香奈は、あたしの隣の席の男子の席に座ってる。
その男子は食堂に食べに行ったし、別に構わないんだけど。
問題は夏実。
夏実は祐の椅子に座っている。
祐はクラスの男子と食堂に行っている。
あたしの近くの椅子だし、夏実が座るのはごく自然なんだろうけど…。
なんか、嫌だなぁ。
って、あたし何考えてるんだろう。
ちらっと夏実を盗み見る。
夏実は黙々とお弁当を食べている。
その姿は、餌を一生懸命に食べるハムスターに似ている。
文句なしに可愛い。
…あ、幼稚園児にも似てるかも。


