教室に着くと、夏実と香奈がいた。


「おはよう、愛華ー!」

「愛華、おはよう」

「おはよう。飛びつかないで」

「あ、避けたー!」


挨拶と同時に飛びついてくる夏実をかわして、あたしは鞄を机に置いた。


「普通、避けるでしょ」

「香奈ちゃん、愛華が冷たいー!」

「普通は避けるよ」


香奈も冷たく返す。

ほらね、やっぱり香奈はこっちの方がいい。

クールな、いつもの香奈だ。


「今日、転校生来るんだって」


さっきのことなんか、まるで忘れたように夏実が言った。


「この時期って、中途半端だね」


香奈が食いつく。

確かに、中途半端。

だって、もう3月だよ?

あたしだったら、こんな時期の転校、絶対嫌。


「訳ありクンっぽいよね」

「どんな子だろうね」

「いいひとだといいなぁ~」


夏実がうっとりと、夢見るように言う。