「じゃ、下駄箱で待ってるね」


そう言って、香奈は窓から身を引っ込めた。

あぁ、そうだ。靴、履いてたんだ。

履き替えるの、めんどいな~。


「愛華、行こう」

「はいはい」


夏実に促されて、あたしも歩き出す。


「…愛華、これ見て」

「ん?」


いつにもなく落ち着いたトーンで話す夏実が、あたしに見せたのは、さっき貰ったお返しの箱。


蓋が開けられていて、紙が入っている。

チョコの上に、控えめに置かれているその紙には、


「好きです」


たった一言、そう書かれていた。

ラブレターだ。


「ラブレターだよ」

「うん」


あたしが思った直後に、夏実が言った。


「それがどうしたの?夏実だって、貰うでしょ」

「…うん。でも、夏実から渡した事はない」

「へぇ」


そんなの、あたしだってない。

というか、それは、あたし達みたくモテる人間のする事じゃないと思う。