「渡してくれる時にね、手が触れてさ」
男子と手が触れるくらい、どうって事ない。
レジのお兄さんと、今まで何回手が触れたか。
「あとね、チョコと一緒に手紙が入ってたんだ。いつもありがとう、って」
良かったね、しか言いようがない。
「すっごくドキドキした!」
でしょうね。 そうじゃないと、私に話さないでしょ。
あぁ、なんか今、すごい悪いことしか思えない。
いつもクールな香奈の方が、あたしは好きだな。
あたしが感じられない、あの感覚を味わっている香奈は嫌いだな。
なんて、あたしが嫉妬してるみたいじゃない。
ありえない。
そう、ありえないよ。絶対。
「おめでとう、良かったね」
あたしは、口から絞り出すようにそう言った。
ぎこちなくなってないかな、なんて心配するのは、あたしが心からそう思ってるわけじゃないから。
そのとき、予鈴のチャイムがなった。
「あ、予鈴だ。愛華、教室戻ろう。夏実も、チョコ片ずけて」
「はーい」
それまで、一心不乱にチョコを食べていた夏実も立ち上がる。


