「いえいえ最後の戦は天命を成し遂げること。
まさに中原に漢帝国の再興を成し遂げること。
必ずやこの孔明、劉禅帝をお護りし帝の天命を
まっとういたしまする」

「ふむ」

劉備の瞳から一滴の涙が伝う。

「最後に孔明、馬謖(ばしょく)には気をつけよ。
お前は愛弟子として後継者に育てようとしておるようじゃが、
軍略にはいくら長けておろうともたたき上げの苦労人から見れば
危険じゃ。重要任務にはしばらくつけるべからず。
魏延もしかり。姜維王平をたててよく意見を聞くべし」

ここで劉備は事切れる。
「劉備殿!」
再び将軍達が駆けつける。

老「ふむふむ、劉備の臨終場面じゃ」
瞳「よく似ている感じだけど」
匠「兜に石がはめ込んである」
竜「ルビーのような赤い石だ」
愛「悲しい場面だわ」
一「わっ!」

諸将のまたぐらから皆が覗く。
床に伏した劉備の枕元に劉禅がいる。

「父上、父上ー!」
まだ幼い劉禅は周りをはばかることなく泣き叫ぶ。
趙雲が長坂の戦いで曹操の陣中を一騎で突破して
助けた劉備の子だ。

劉備の握り締めたこぶしがすっと開いたが、
何もそこから床には落ちなかった。