さよならさえ、嘘だというのなら


違う!
凪子のカッターナイフは俺が没収して、俺の部屋の机の上にある。

絶対違う!

「そうだよね。ポケットから落ちたのと同じじゃん」

「ウサギの次は結衣?どうして?」

「須田君を取られそうになったから?」

須田凪子犯人説が盛り上がる。
それちょっとヤバいって。
凪子は無実。

「それ……違う」

急に疲れが出たのか
言葉も身体も回らない。

ふらっと倒れそうになるのを七瀬が見つけ、俺の身体を支える。

「それは須田のじゃない」
声をふりしぼり言うけど、誰も聞いてくれない。

「犯人は須田凪子だ」

「結衣を返してよ」

違う
それ……違う。

心音だけがバクバク鳴り
どうしたものか言葉が出ない俺。

ちくしょー
校庭20周が余計だった。
身体も心もボロボロになってる。

七瀬は優しく「颯大。大丈夫?」と俺の背中を優しくさする。

このままではヤバい。
否定しようと頑張ってたら

「ごめん遅くなって」
フェンスを飛び越え
須田海斗が現れた。

こんな時でも爽やかって……何?

黒いTシャツにジーンズ
堂々と俺達の輪に入り
自然に会話に加わってゆく

何年も前から居る人間のように

都会から来た王子様は
俺達に馴染んでいた。