さよならさえ、嘘だというのなら


「自分から周りと打ち解けなきゃ、もっといじめられるよ」

「私はいいの」

「そーゆーのが、ウザくてキモいって言われるんだよ」

ウザいならいいけど
キモいが入るとヤバいだろう。

もっとこれから
いじめはひどくなる。

「海斗君を解放してあげて。かわいそうだよ」

「お願いします。兄と別れて下さい」

「意味わかんない。理由を言って。私が嫌いとか、海斗君を取られたくないとか、色々あるでしょう」

その理由を俺も知りたくて
彼女たちの前に出るのを抑えていたら

須田海斗が反対側から現れた。

「凪子!」

そして
隠れていた俺をも見つける。

千里眼め。

「西久保君もどうしたの?」

須田海斗の声で松本と凪子が俺に集中。

こっそり覗いていたのバレてしまった。

「松本さんごめん。凪子が変な話した?」

都会の王子様
須田海斗は凪子より先に松本の傍による。
ただそれだけで
松本は今までの全てを許した雰囲気になっていた。

そんなに好きなのか。

「妹さんは、私が須田君を取ったと思ってる」
半泣きで松本が言う。
丸く大きな瞳が潤み
見ていてドキッとしてしまう。

「ごめん。でも僕は松本さんが好きだよ」

魔法の言葉を人のいる前で堂々と言えるのは、都会の王子様だから?

俺には無理。