さよならさえ、嘘だというのなら


「この時代に?」

「だって首筋切られて失血死ってさ、人の血を吸うために斬ってるかもよ」

なんのラノベ読んでるんだろ。
面白かったら後から借りよう。

「ヤーさん達の縄張り争いだろ」

「お兄ちゃんって夢がないー」

「お前が夢で溢れすぎ」

「いやサイテー」

「そんなに襲って欲しいのか?」

俺はふざけてバターナイフを手に持ち、ヘヘヘと笑って妹に変出者っぽく笑うと妹は爆笑。

「朝からいい加減にしなさい!」

いつの間にか後ろに回っていた母親に、頭をド突かれる俺。

「夏休み明けから遅刻しないでよ。お母さんもパート行くからね。プルミル飲んだ?」

「今日から学校給食で出るからいらない」

「同じく俺も」

うちの町は
保育所から高校まで給食が出る。

「お父さんとおじいちゃんは飲んでね」

バタバタと台所に戻り
小さな紙パックの飲料をテーブルに二つ置く。

我が町の特産物飲料

プルミル。

町で生産されている栄養補助食品。
我が町
イチオシの売り製品。

「母の愛が入ってるからね」

うちの母親はプルミルを作る工場で働いている。
いや
ここの町のパートの8割がプルミル工場と言ってもいいだろう。

母の愛も入ってるけど
隣のおばさんの愛も、向かいのおばさんの愛も鈴木さんのおばさんの愛も入ってる。