さよならさえ、嘘だというのなら


「さよならしなきゃ」

「しなくていい」

「手を離して」

「嫌だ」

「消えてしまいたい」

「ダメだって!」

こらえきれなくなり
俺は凪子の細い身体を抱きしめる。

細くて柔らかくて小さくて

たまらなく愛しくて

ずっとその身体を抱きしめる。

「私は汚いの」

「どこが?」

「汚れてるの」

「汚れてない」

力を入れて抱きしめる。

どこにも行かせない。

「私は颯大君が思ってるような女の子じゃないもの」

あきらめた様に凪子は身体の力を抜き
俺の胸で泣いていた。
彼女の腕の傷跡が蘇る。

「そのままでいい」

「だって……」

「いいって」

そっと頬を重ねて
彼女の唇に自分の唇を重ねる。

「颯大君」

「あのさぁ。この町、超田舎だけどスゲー景色が綺麗な場所が多いんだ」
自分の行動が急に恥ずかしくなり
凪子を胸の中に入れてそのまま俺は早口で話し出す。

「小学校の裏側だけど、雨上がりの虹が綺麗に見える場所があってさ」

「虹?」

「うん。本気で綺麗。七色が見える」

「……見たい」
小さく彼女はそう言って顔を上げた。