文化祭の準備は着々と進んでいた。

執行部としての仕事も文化委員長としての仕事も。
ただ、執行部としてのオープニングの動画制作の方が、私の中では少しだけ重要だった。




その日は担当の小田原先生に文化委員の仕事へ強制連行された。


「一花はすぐサボるんじゃけぇ」
「ちゃんと行ってますよ!先生とのタイミングが合わんだけです!」
「ほらそうやってすぐ言い訳するー。先生、お母さんに聞いとるんじゃけぇね」
「・・・いらん事を」





図書室に入ると、あっちゃんが既に待っていた。

「いちちゃんだ!今日は早いねー」
「ねぇ、あっちゃんからも言ってよー。私、ちゃんと毎日来とるよね?」
「うん。下校時間のちょっと前には絶対来て作業してるよ」
「ほら!先生聞きました!?」
「いや、それじゃ駄目でしょ。委員長なんじゃけぇ」
「えー・・・」
「せっかく早くに来たんだから、さっさと作業しんちゃい!」
「・・・はーい」

靴下を脱いで紙の上に乗る。
もうほとんど色が塗られていた。

「今日で終わりそうじゃね」
「うん!明日のリハーサルには体育館に飾れそうね!」
あっちゃんは笑顔で言った。

「絶対良い出来だよ!絶対」

私もつられて笑った。














私とあっちゃんが描いている間に残りの委員達もちらほらと来ては少し作業を手伝うと、部活があるからと去って行った。

それも仕方ない。1,2年生は新人戦が控えている。
副委員長はしばらくいたが、下校時間にはまだ時間があるうちに帰ってしまった。

「副委員長、もうちょっといてくれてもいいのにね」

「・・・んー、まぁ、もうすぐ受験だしね」

そんなの私もあっちゃんも同じだ。

私は本当の理由をなんとなく聞いていた。



後から考えれば、あの年はそういう事が多かった。