諒に言われて初めて気づく。


諒や美奈、俺の両親が一緒にいる前では山下陽子が姿を見せたことがない。


その理由はわからないが、山下陽子が出てくることができる環境が俺と2人きりでいること。


なのかもしれない。


「俺と2人でいて山下陽子が出てくるのを待つ……?」


「そうだな。それが一番いいと思う。ただ、お前1人で薫子のスイッチを切るのは難しいだろう。


俺が隠れているから、山下陽子が出てきたら合図を送ってくれ、助っ人に行く」


だいたい話は固まってきた。


これでうまくいくかどうかわからないけれど、希望は見えてきたように感じる。


「でも、どこで?」


俺が聞く。


「あの公園はどうだ? あそこなら身をひそめる場所はあるし、あの場所で1度山下陽子が姿を見せているなら、出てくる可能性が高い気がする」


「そうか。それがいいかもしれないな」


俺は諒の提案を受け入れた。


「善は急げだ。燈里、今夜10時にあの公園に来れるか?」


「あぁ。大丈夫だ」


「くれぐれも気を付けてな」


そう言い諒は息を吐き出したのだった。