「あたし……人を殺して生き返りたくなんてない!」


その言葉に俺はハッとする。


「山下陽子か!?」


「そうよ……。あたしはもう、誰も殺したくなんてない」


包丁を持って右手は小刻みに震えている。


左腕の液体はすべて排出され、頬と同様に一部分だけベッコリと凹んでいる。


まるで妖怪のような姿だ。


「ここから逃げて!あたしの右手があなたを殺そうとしている!」


山下陽子が叫ぶとほぼ同時に、彼女の右腕が包丁を持ったまま俺の頭上へと移動していく。


それは彼女の意思とは関係なく動いているようで、不自然な動き方だった。


「俺は殺されてもいいと思っている。山下陽子、君が生き返る事は悪い事じゃないと思うんだ」