なにか音がする。


何の音だ?


疑問が連なり、俺は更に目を開けた。


その視界に入って来た光景に言葉を失う。


薫子は右手に包丁を持っていた。


きっとキッチンから持ってきたのだろう。


その包丁を自分の左腕へと突き立てていたのだ。


中の液がボトボトと床へ落ちている。


「なに……してるんだ……」


俺は唖然としたままそう聞いた。


薫子がこちらへ視線を向ける。


その表情は苦しみに耐えているように見えた。