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夜の院内は静かだった。


時々緊急外来者の話声が聞こえてくる程度で、大した物音はしない。


俺は誰かと鉢合わせをすることを少し望んでいた。


誰かと会えば俺の腕から流れている血に気が付くだろう。


そうすれば医者や看護師たちに連絡が行き、結音を殺すことは失敗に終わる。


けれど、こう言う時に限って院内で誰かに出くわすことはなかった。


いつもは慌ただしくしている看護師たちの姿も、今は見かけない。


あまりにもスムーズに結音の眠っている病室までついてしまい、俺はギリギリと奥歯を噛みしめた。


くそっくそっ!!


心の中で悔しさを爆発させる。


こうなったのは誰のせいでもない、自分のせいだ。