じりじりと迫ってくる薫子に叫ぶ。


しかし薫子は止まらない。


真っ直ぐ俺に向かってくる。


敵意をむき出しにし、襲ってくる。


「知らない、そんな名前……!」


薫子は手からカッターナイフを落とす。


カランと軽い音が響いた。


代わりにその手は拳を作る。


「生前お前は彼氏人形を止めようとして殺された! 思い出してくれ!!」


俺は必死で叫ぶ。


生前、山下陽子は人形に苦しめられていた。


それを少しでも思い出してくれれば、今の俺の気持ちが理解できるはずだ。