「あぁそうだ。俺はろくでなしのクズだ。あんな得体のしれない人形を買って喜んでいる大ばか者だよ! だからお前の方が結音にふさわしいって言ってんだろ!」


「黙れよ!!」


諒が歯を食いしばっている。


俺の事を殴りたいけれど、理性がそれを止めているのだろう。


怒りをどうにか鎮めようとしている。


「お前が相手だから……今まで言えなかったんだろ……」


「やっぱり、俺に遠慮してたのか」


わかっていたことだった。


美奈も諒も俺に遠慮して自分の気持ちを殺してきたんだ。


自分の気持ちを伝えないまま、俺と一緒にいてくれていたんだ。


この関係が崩れないように、必死に保ってきたんだ。


なにも知らず気が付きもせずに過ごしていたのは、俺1人だけ。


「なぁ諒、俺ってバカだろ。美奈の気持ちにも諒の気持ちにも今まで全然気が付かなかったんだぜ。


俺と一緒にいたら辛い気分になったりしたんじゃないのか?


なのに俺、全然知らずにお前らに甘えて生きてきて、揚句、結音にそっくりな人形なんか買ってきて……」


言いながら涙があふれて、流れて行った。