薫子が俺の頭を撫でる手を止める。


「そう、ありがとう」


そして俺から身を離す。


その顔は人形のように冷たくて、俺はハッと息を飲んだ。


「もう、いらないんだよね? 病院にいる子」


「……薫子……?」


「あたしがいれば、それでいい。それだけで燈里は幸せ」


薫子が俺の机に近づき、一番上の引き出しを開けた。


文房具などが無造作に突っ込まれている場所だ。


「何をしているんだ、薫子」


「ほら、あったよ」


そう言い、手に持ってかかげたのはカッターナイフだった。


俺は一瞬にして血の気が引いて行くのがわかった。


「なに持ってるんだよ、危ないだろ!」


咄嗟にそれを奪おうとする。