人間に危害を食らえるような人形は、持っていてはいけない……。


そこまで考えて、俺は立ち止まった。


学校の校門はすぐ目の前で、朝の太陽に校舎が照らし出されている。


これから今日もここで勉強をする。


つまらない授業に耳を傾ける。


諒や美奈と一緒に昼食をとって。


放課後は3人で病院を訪ねて。


そんな日常を思い起こす。


捨ててはいけない日常を。


「……捨てるのは……薫子だ」


俺は小さくそう呟き、そしてまた一歩を踏み出したのだった。