抱きしめるとちゃんと体温はあるけれど、それは薫子にとって無意味なこと。


どちらかと言えば購入者が楽しむために作られている感じだ。


俺は冷たくなる指先をさすりながら歩いた。


薫子。


あいつは人間じゃない。


人形だ。


結音にそっくりな人形。


自分に言い聞かせるように。


暗示をかけるように繰り返す。


そうしないと感覚がマヒしそうだった。


まだ昨日のキズが痛む。


この傷は人形がしたものだ。