「どうして泣いてたんだ?」


聞くと、薫子は真っ直ぐに俺を見つめ返してきた。


そして言った。


「お願い、別れて」


薫子の言葉が右から左へと抜けて行く。


今、なんて言った?


聞き返そうとする俺よりも早く、薫子の口が動いていた。


「あの病院の子の事が好きなんでしょ? わかってるんだから!」


叫ぶようにそう言い、俺を突き飛ばす薫子。


その衝撃で体は後ろへとバランスを崩し、そのままベッドの上に転がってしまう。


「なに……言ってんだよ……」


信じられなかった。


薫子がそんなことを言いだすなんて。