「どうしたんだよ、薫子?」


薫子は小さく嗚咽をもらしなから泣くだけで、何も言わない。


このままじゃ泣いている理由もわからない。


俺は薫子を落着かせるため背中をさすった。


何度も何度も、ゆっくりゆっくり。


10分ほどそうしていると薫子の嗚咽が小さくなっていった。


少しずつ落着いて来たようだ。


「薫子、大丈夫か?」


そう聞くと、腕の中でコクリと頷く薫子。


俺はそっと薫子から身を離し、その顔を覗き込んだ。


目の周りが赤くなっている。