起きている薫子と眠り続けている結音。


2人の間で俺の精神状態は不安定に揺れているのかもしれない。


「ほら燈里、薫子ちゃんを紹介しないと」


美奈が俺の背中をポンッと叩く。


「あ……あぁ」


危うく今日のお見舞いの目的を忘れるところだった。


俺は一度咳払いをして、薫子を結音の横へ立たせた。


「結音。この子、薫子っていうんだ」


薫子が小さくお辞儀をする。


当然ながら、薫子の記憶の中に結音は存在していない。


薫子にとっては初めて会う人ということになる。


俺は結音に彼女人形についての説明を始めた。


怖い噂話はすべて避けて、ただ楽しい人形だということを伝えた。


話をしながら、俺は結音の顔を見つめる。