_____________________
無機質な電子音が響く中、僕は、彼女が死に際語った長い長い物語を咀嚼していた
ゆっくり
ゆっくりと
心臓が止まった合図を聞いて、病室には、白衣を着た男女が入ってきた
心臓が止まって、徐々に冷たくなっていく彼女の手を握りしめながら、僕は涙を流す
美しくて、高潔で、そして、誰よりも優しくて
ぼくは彼女を愛し、そして愛された
このことは、ぼくらが監獄にいる間のつかの間の幸福だったのだろうか
ご臨終ですと、初老の医者は言った
手を握りしめているぼくが一番よくわかっている
彼女の美しい精神は、薄青の光を放ちながら、柔らかい檻から解き放たれ
真実に自由の世界へ旅立ってしまった
ぼくの感じた幸福の時間
この時間は、どれだけ懲役期間を減らすのに役立っただろう
ほとんど役にたっていないと思いたい
だって、この時間が彼女を延命させたのなら、ぼくは後悔しない
彼女を失ったぼくは、きっといま、ものすごい速さで懲役期間が減っている
すぐに追いつくから
ゆっくり歩いていて
無理には急がない、ちゃんと、許してもらってからそっちに行くね
だから、待ってて
END