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無機質な電子音が響く中、僕は、彼女が死に際語った長い長い物語を咀嚼していた




ゆっくり




ゆっくりと





心臓が止まった合図を聞いて、病室には、白衣を着た男女が入ってきた



心臓が止まって、徐々に冷たくなっていく彼女の手を握りしめながら、僕は涙を流す




美しくて、高潔で、そして、誰よりも優しくて



ぼくは彼女を愛し、そして愛された




このことは、ぼくらが監獄にいる間のつかの間の幸福だったのだろうか




ご臨終ですと、初老の医者は言った




手を握りしめているぼくが一番よくわかっている




彼女の美しい精神は、薄青の光を放ちながら、柔らかい檻から解き放たれ



真実に自由の世界へ旅立ってしまった



ぼくの感じた幸福の時間


この時間は、どれだけ懲役期間を減らすのに役立っただろう



ほとんど役にたっていないと思いたい



だって、この時間が彼女を延命させたのなら、ぼくは後悔しない



彼女を失ったぼくは、きっといま、ものすごい速さで懲役期間が減っている





すぐに追いつくから




ゆっくり歩いていて





無理には急がない、ちゃんと、許してもらってからそっちに行くね





だから、待ってて















END