奇病患者特別治療施設

「恵ちゃん、大丈夫?顔色が悪いわ。」

「大丈夫、気にしないで。」



また、腕を切ったのかしら。


この子は痛みが消える病を持つ。


そんな自分が信じられなくて、彼女は何度もリストカットを繰り返している。


何度か私や他の患者が止めているのだがやめる気配は無い。



彼女の病気はこのようにリスカなどを行い、出血多量で死んでしまうケースが多い…早くどうにかしなければ。



「射手島匠、次の院長候補です。よろしく。」

「よろしくお願いします。」


「あっ、じゃあ、射手島くん。次へ行きましょう。」

「はい。」




「この子が最後よ。」

「情報は?」

「名前は紅葉。14歳よ。」

「そうか、行こう。」

「紅葉、入るわよ。」



ガラッと引き戸を開ける。


そこにはいつもと変わらず、窓の外を見ている彼女がいた。

今日は春なのに少し暑いくらいの気温なのに、汗一つない涼しい顔をして、長袖の病院服のその上から更に上着を着ていた。


その暑そうな格好には勿論…理由があるのだ。







「紅葉、次の院長の射手島匠くんよ。」


「紅葉です、よろしく。」

「射手島です。」

「行きましょう、射手島くん。」

「あぁ」







彼女は早く行けと、私に目配せをしてきた。
やはりバレるのが嫌なのか?

どっちにしろここで説明する必要があるのに…


「二階堂さん、彼女の病気は?」

「あまり、詳しくは言えないけど良いかしら。」

「構いません。どうせ、俺はここの院長決定でしょ?時期にわかりますから。」

「そうね、じゃあ話すわ。彼女は…皮膚に植物の根が張ってる。水分をとると植物は育って、稀に花が咲いたりもするわ。」

「彼女の病気は重いのか?」

「えぇ、かなり重い。彼女の病気は1歳の時に発症したから…恐らくもう永くないの。」

「そうか…」