隣の部屋から、隼人の泣き声が聞こえる。


隼人も怖いんだ、死ぬのが。


治らなくなってしまうのが。





隼人の病気は体に余分に血液が溜まる病気、だから、


1日に一回ずつ血液を排出する必要がありる。



きっとその度に彼は死を近くに感じるんだろう、辛いんだろうな。


「あーあ、まただよ。」


あたしだって、他人事のように済ましてる場合じゃないんだよねぇ…


枕の下に隠したカッターを取り出し刃をチキチキとだしていく。





きっとここ数日の間あたしの顔は真っ青だったに違いない。


だから百合奈もあんなに心配してたんだろうな、



「っ!!い、った…」


なんてね。



「痛い、痛い痛い痛い」



お願い、痛くなってよ。



「もう、やめなよ。」

「あ、梓っ!」

「一日中腕切ってんじゃないよ。無意味なのがわからないの!?」

「やめて!話してっ!!!」


無理やりカッターを奪われた。


見上げた時、梓は涙目だった



「あんたに…っ!あんたなんかにわかるもんか!!!あたしの気持ちなんか!」


「わかるから!!私にはわかるから!めぐちゃんの気持ち!!」

「なんでよ!なんで言い切れんの!?」


「私もめぐちゃんと一緒!」



「は…?」



「私は、うなじに目がある。」

そう言って梓は髪を掻き分け、うなじを私に見せた


ギョロッとした目があたしを見た途端、なんだか寒気を感じた。





「私はこれで未来がみれる。」

「そうなんだ、でもだから?」

「めぐちゃんは出血多量で死んじゃうの。」

「そ、いつ?」

「夏よ、」

「そっか。あたしも死ぬんだ、死ねるんだね。痛みなんて感じないのに」

「私も、めぐちゃんが死んだ後に死ぬ。
出血多量で、自殺して死ぬのよ。」

「なんで…?」

「めぐちゃんがいなくなったから、めぐちゃんがいなくて、寂しかったから。」



泣いてた、梓は。

そんな梓を見るあたしの視界は滲んでいた。




「お願い、もうやめて、死なないで…めぐちゃん。寂しいのは嫌…」

「わ、かった。」

「ありがとう。」


そのあと梓は、あたしにリンゴを剥いてくれた、2人で食べた後、梓は部屋に帰った。







「そっかぁ…あたし、死ねるんだ。」