『汽水魚』


光る銀の爪
塗ったばかりで乾いてもいない

淋しげな指先に
散りばめられたそれは
翳った瞳にも確かに映った

波に揺らぐ鮮烈なドレス
雪の舞う数センチ下
君が泳いでるのは汽水域

境界は何処までも不可視
ひどく曖昧で不可思議な所

夢の跡
淡く色付いた頬
不遜に見えた君の存在が
ちっぽけになる瞬間

君が泳いでくのは汽水域

混ざり合って
交じり合って

境界が在ったことすら
忘れるような
そんな自由で美しい

君に似合う場所