同じ高校の3年のお姉ちゃんは2年前、入学してすぐにイケメン彼氏ができたって自慢してきたけど、私は今やっとできたばっか。
高2で生まれて初めて付き合うって遅いのかな?

樫原はる。
樫原るりの、妹。
あの美人姉の妹なのに、ゆうほど可愛くもない妹。

そう思われているようで、お姉ちゃんとは歩けなかった。
お姉ちゃんはとにかく美人。目はぱっちり二重で、鼻はツンと尖ってて、口は小さくて唇も薄い。肌は色白だし、首も長いし。
お母さんが美人だからだろうけど、私はお父さんに似てしまったらしい。
放課後。教室には部活をサボるつもりの生徒が多く残っていた。
私は椅子に座って前の席の陽菜にお姉ちゃんのことを言ってる。
「そんなさー、ネガティブなっちゃダメだって」
お姉ちゃんのことを言うと、陽菜は必ずそう言う。
だけど、まだ信じられないんだ。クラスの人気者の星出叶えくんが、まさか私に……。
「……うん。でも」
「あのねぇ」
私はビクリと反応した。
陽菜の声じゃなかった。
「俺はお前が好きなの。お前のことが、好きなんですー。お前のシスターなんて関係ないんですー。俺は樫原るりじゃなくて樫原はるが好きなんですー」
後ろから首に腕を巻きつけられる。
心臓が止まる思いだった。
ここは教室……なのに、見慣れたまわりの風景が全く頭の中で整理されない。
……左頬に、やわらかいものが触れた。
「分かったか?」
星出くんの頬。
「ほ、ほし……」
「星出くんじゃなくて、叶え。分かったか?」
星出くんの声がミリ単位の近さで聞こえる。
胸のドキドキが聞かれそうで怖かった。
「分かっ……た……」
腕がほどけた。
しばらく振り返ることができなかった。
顔が熱い。
頭がぼーっとする。
「カナぁ、ヒューヒュー!」
「お前、樫原と付き合ってんのか!」
仲間の茶化しの声と共に、足音が遠ざかった。
「はる……あの様子じゃあ、お姉ちゃんのことなんて気にしなくていいと思うよ」
陽菜が、苦笑して言った。