スーパーマーケット中を探し回ったが柚子の姿を見つけることは出来なかった。すれ違うことはなかったから行き違えた訳でもない。優真はここへ来るまでの道筋を頭の中で思い浮かべ、危険な場所を探した。‥‥近々取り壊される廃工場があった。開けっぱなしの扉では人が出入りするのも容易いだろう。
数分で廃工場に到着した。開いていた扉から中を覗いた。すると、柚子の姿が見えた。無邪気に猫と戯れる柚子の姿が。
「何してるんですか、先輩」
「あ、買い物頼まれたんだけど猫追いかけて来ちゃって……ってここどこ?」
自立する際に最も心配なタイプだ。
その直後、扉が開き誰かが入ってきた。優真は咄嗟に身構えた。やはりここは危険だったようだ。
「あー、身構えなくていいよ兄貴。何もなかったみたいだね」
そこには亮真の姿があった。
「お前‥何しにここに?」
「いや、お使い頼まれたんだけど猫の鳴き声が聞こえたからつい……」
お前もか、優真は心底弟に呆れた。