優真は谷村と書かれた表札を確認するとインターホンを押した。走ってきたせいか息切れが激しい。それでも柚子の無事を確認することを優先させた。はい、と母親らしき声がした。声にならない声で柚子さんはいますかと問いかけた。 しかし、その返答は優真を冷たく突き放した。 「今柚子は外出中ですけど……」
外出中となればより危険だ。優真はどこに出掛けたかを聞くと礼も言わずに駆け出した。優真はスマートフォンを取りだし、柚子に電話をかけた。呼び出し音が続き、ブツッと音がして切れた。その短い音は優真を焦らせるばかりだった。やはりただ事ではない。杞憂に終わってほしかった心配も今や現実だ。ならば、すべきことは一つ、柚子を救うこと。決意を固めた優真は柚子の出掛けた先、スーパーマーケットへ向かった。