「でさ、わざわざこっちまで連れてきたのは人に聞かれたくない話があったからなんだよ。東京拉麺だとバイト仲間とかいるし」
二人とも醤油ラーメンを注文し、運ばれてくるのを待っている中柚子は言った。人に聞かれたくない話か……。竜希から言われたことも人に聞かれたくない話。いわゆる「内緒話」だった。
「何でそれを俺に?先輩もっと仲良い人とかいますよね」
「なんか話す気になれないって言うか‥‥谷村だったら口固そうだなって」
あまり人の話題に興味を示さない性格が裏目に出たようだ。こういった話を聞くのは苦手だと言うのに。だが、ここまで来たのなら話を聞く他なかった。
「この前家に変な手紙が届いたの。お父さんの財布を浦和高校前に落とせって。普通なら無視するに決まってるんだけど、私のこと隠し撮りした写真が同封されてて……。誰にも言わないでね、口外するなって書かれてたから」
身の毛もよだつ思いだった。確かに危害を加えられる恐れがあるなら従わない訳にはいかない。そのとき、優真の心の奥でどこか引っ掛かる記憶にぶつかった。年齢の割りに中身の少ない財布。そして免許証の名字‥‥‥飯島。竜希が拾った財布だった。