結局二人は財布に免許証等を入れ、高校の向かいにある交番の駐在の目を盗み交番の前に置いた。良心の呵責はあったものの、金を使ってしまった以上は仕方ない。優真はせめてもの償いで自身の財布から二千円、竜希に半ば強制的に五千円を要求しそれを財布に入れておいた。合計七千円。免許証を見たところ財布を落とした男は四十五歳だった。七千円程度では生活を充分に苦しめてしまうかもしれない……。優真は始めて自身の財布の貧相さを恨んだ。
「ところで、いくら入ってたんだよ」
優真は竜希に聞いた。せめて入っていた金額が七千円に近いことを祈ろう、その思いが通じたのか竜希からの返答は優真を安堵させるものだった。
「一万円入ってた」
損した額は三千円‥‥。生活を苦しめる程ではないだろう。優真は心に抱いていた罪悪感が薄らいでいくのを感じた。
「その金は何に使ったんだ?」
罪悪感が薄らいだせいか、優真の聞き方は多少穏やかになっていた。
「確かカラオケとかゲーセンとか……。まだ残ってた五千円はお前に盗られたやつだよ」
「人聞きが悪いな。持ち主に返しただけだろ、というか持ち主から金を盗って少し減らして返しただけよな、今回の件」
「まあ、それは否定しないけど‥‥」
やっぱりこいつは駄目人間だ。優真は友人に対して心底呆れ果てていた。